暗黒神話〜時空を超えた古墳巡りアドベンチャー〜
ヤマトタケルよ、お前は弥勒菩薩となるのだ!
この宇宙はなぜ生まれたのか?
世界の真実は一体どこにあるのか?
思春期の頃、誰しもがふと疑問に思い、ちょっと考えただけでその馬鹿らしさに気づくこの謎を、クソ真面目に考え抜いた漫画家がいる。
諸星大二郎である。
彼の代表作の一つである「暗黒神話」は、日本神話のヤマトタケル伝説をベースに、インド哲学や真言密教をぶち込んだ、オカルト漫画のハッピーセット。諸星ワールドの入門書的な作品である。ちょっとあらすじを紹介しよう。
縄文好きの少年・武は諏訪で、自称歴史学者の老人・竹内と出会う。
これは俺の経験上、断言できることだが、この世の中で自称歴史学者ほどメンドクサイ存在はない。案の定、武も竹内に導かれるまま、世にも珍妙な古墳巡りの旅を強いられることになる。
そしてここから怒濤の展開。
まず開始30ページで、すべての時間と空間を支配するブラフマンが登場。オオナムチに聖痕を付けられた武はアートマンとなり、ヤマトタケルの遠征ルートを瞬間移動しながら旅するはめになる。
道中、宿敵・クマソの末裔との対決を制した武。自分がヤマトタケルの生まれ変わりであることを自覚した彼は、暗黒神スサノオ、すなわちオリオン座の暗黒馬頭星雲を呼び覚ますことに成功する。
すると、ここでいきなり50億年後の未来へとタイムスリップ!降り立った地球は、なんとすでに滅亡寸前の危機にあった。もはや武にはどうすることもできない。彼はただ、仏陀の予言通り、弥勒としてアートマンの運命を全うするのである……。
あなたも明日からアートマンだ!
どうです。
俺がこの漫画の素晴らしいと思うところは、オチまで事細かに説明しても決してネタバレにならないということだ。
現に俺はこの漫画を何度も読み直しているんだけど、内容がまったく頭に入ってこないから、毎回とても楽しく読める。
未読の方はぜひ読んでもらいたい。内容をすべて理解できれば、あなたも明日からアートマンだ。
反対に何回読んでも分からなかった人に、悲しい知らせが二つある。
一つはこの内容が、1976年当時の少年ジャンプに連載されていたこと(友情・努力・勝利?知るかそんなもん)。
もう一つは、この作品に「孔子暗黒伝」という続編があるということ。ひどく嫌なことがあった日は、二冊合わせて読めばきっと幸せな気持ちになれると思う。